EP Patent status and claim 1 of Toolgen‘s CRISPR-Cas9 Patents.
執筆用メモ
ツールジェンの欧州特許(2019/02/22)
真核生物のデータを含めて初めてFileしたのはToolgen。
ただし、Sienceの論文公開後であり、全般的に進歩性?
ガイド鎖末端のGG付加がポイントか。
EP2912175:異議申立中(口頭審理未定)
EP Patent status and claim 1 of Broad’s CRISPR-Cas9 Patents.
‘執筆用メモ
欧州におけるBroad Instituteの特許の状況。~2018年10月初旬までに成立済のものまで。
EP2764103:口頭審理待ち(2019/03/04、補正クレーム提出済)
EP2771468:特許取消→審判請求
EP2784162:特許取消(2019/02/13)→審判請求(2019/02/15)
EP2825654:口頭審理未定(補正クレーム提出済(2018/09/03))
EP2840140:口頭審理未定(補正クレーム提出済(2018/07/23))
EP2931892:特許許可(2018/08/06)
・機械学習を用いた設計用プログラム
EP2931897:口頭審理未定(補正クレーム提出済(2019/01/08))
EP2898075:口頭審理待ち(2019/07/04、補正クレーム提出済(2018/05/09))
・SaCas9タイプ(小さいCas9)のII型CRISPR-Cas9複合体、JPに対応する特許があったはず。
EP2931898:口頭審理待ち(2019/05/15、補正クレーム提出済(2018/03/27))
CRISPR-CAS9システムの基本特許の成立予定(米国)
先月末にこんなことを書いていましたが、予想外に早くUCB特許が成立することになりました。
2月8日付けでUCBの米国出願(13/842,859)について、特許許可通知が発送されました。本通知から3ヶ月以内に特許料を支払う必要があるため、遅くとも5月には特許が成立します。
なお、1月9日付けでTerminal Disclaimerが提出されており、存続期間の満了日は米国のファミリー出願と同じになります。
本件の特許化により、UCBは、sgRNAを使用するCRISPR-Cas9システムについて基本特許を取得することになります。(以前に記載したようにsgRNA自体をカバーするとクレームは、日欧の特許とは異なり、本件に含まれていません。)
Broadは、自身の特許の価値には影響しないとコメントをしていますが、sgRNAを使用する場合はUCBのライセンスが必須となり、ライセンシーは複数ライセンスが必要となります。
このため、従前よりは特許の価値が低下することになるでしょう。
Broadからのみライセンスを受けている企業もあるため、今後、UCB v Broadの第二ラウンドが開始されるか?(開始済?)
話題のエボラウイルス治療薬の特許
某大学の先生が製薬企業が開発してくれないので、自分で開発する。自分で開発するにあたり、前臨床試験に用いる資金がないので、クラウドファンディングをするということです。
ビジネスをするつもりであれば特許があるでしょうし、関連する特許を調べてみました。
ベンチャー作ってみればいいのではないかという気もしますが。
(追記)関連ベンチャーがありました。
なお、シーズとして面白いものの製薬企業が導入しないのは、だいたい何らかの理由があります。
先生の話に基づけば、抗体と化合物の2種類の特許を出願されているようです。
調べたら簡単に見つかりました。
・抗体特許
出願番号:PCT/JP2016/074146
発明の名称:全てのエボラウィルス種の感染性を中和するモノクローナル抗体
移行国:CA、CN、EP、US、JP
韓国のタンクで製造して、アフリカに輸出すれば特許権回避…!
国際調査見解書を確認する限り、下記請求項2で特許性が認められているため、クレームとしても広いです。記載要件は指摘される可能性があります。
【請求項2】
エボラウィルスの表面糖タンパク質(以下、GPと略記する)の内部膜融合ループを認識し、
前記GPの内部膜融合ループを認識されるエボラウィルスが、ザイールエボラウィルス、スーダンエボラウィルス、ブンディブギョエボラウィルス、レストンエボラウィルスおよびタイフォレストエボラウィルスの全てのエボラウィルスである、エボラウィルスの生物活性を中和し得るモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
実施例を確認する限り、取得された抗体は1種類(6D6)のみです。
IC50は以下のとおり。
ザイール: 0.12 μg/ml
スーダン: 0.19 μg/ml
ブンディブギョエ: 0.24 μg/ml
タイフォレスト: 0.33 μg/ml
レストン: 0.62 μg/ml
(参考)シンポニー(抗TNFα抗体):3.2 ng/ml
・化合物特許
出願番号:特願2017-71729、PCT/JP2018/013581
発明の名称:フィロウイルスの細胞侵入阻害活性を有するビアリールスルフォンアミド誘導体
移行国:移行未
国際調査見解書を確認する限り、下記請求項4に限定すれば、特許性が認められるようです。ただし、効果を確認しているのは、請求項7に列挙されている化合物の一部です。
式(I):
[化1]
式中、
R 1は、H、Hal、AlkまたはOAlkであり、
R 2は、NO 2、AlkまたはArであり、
R 3は、
[化2]
であり、
ここで、
nは、0~5のいずれかであり、
R 5~R 8は、それぞれ独立して、H、AlkまたはCOOAlkであり、
Xは、CH 2またはOである、
R 4は、
[化3]
またはナフチル基であり、ここで、
R 9は、H、Hal、AlkまたはOAlkである、
ここで、
Alkは、それぞれ独立して、炭素数が1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
Halは、それぞれ独立して、ハロゲンであり、
Arは、それぞれ独立して、Halによって置換されたアリール基である、
で表される化合物もしくはその水和物または当該化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはその水和物。
化合物番号4-17、4-20、4-21、4-27については、IC50も調べており、IC50は以下のとおり。
ザイール: 約50 nM
スーダン: 約300 nM
ブンディブギョエ: 約50 nM
タイフォレスト: 約0.5-1 μM
レストン: 約1 μM
(参考)タミフル:0.1-3 nM
シーズとしては面白いですが、最適化ができていない印象を受けます。
製薬会社としては出願以前の段階で自社で練り直したいところでしょうね。
UCB v Broadのインターフェアレンスの終了と今後の動向
UC Berkeley v Broadのインターフェアレンスに関するCAFC判決について3ヶ月前に下記の記事をアップしましたが、昨年末に動きがありました。
UCBは上告は行わず、CAFC判決が確定。この結果、再度審査部での審査に付されることになりました。
UCBは12月14日付けで一部の請求項の削除と誤記訂正とを行い、後はAllowanceを待つという状況です(特許要件の審査はインターフェアレンス前に一度終了)。
ただし、補正の前後に、UCBはEPの異議申立てで提出された文献と推定される、大量の文献をIDS提出しており、1000ページは超えそうなので、これを審査官がチェックするのに時間がかかりそうです。
審査官ご愁傷様…
早ければ本年前半には、米国においてもsgRNAを使うCRISPR-Cas9システムの基本特許が成立し、この結果、日米欧中において、sgRNAを使うCRISPR-Cas9システムについては、UCBのライセンスが必要な状況になるでしょう。
余談ですが、UCBは、本件に関連して米国で34件の継続出願(うち2件は昨年に特許成立)を行っているため、sgRNAの構造に関する要素技術や、二本鎖型のRNAをガイド鎖とする形態については、これらの出願で権利化していくことになります。
時間があれば全件チェックしたいのですが、どうなるやら…。
治験段階に入った、CRISPR Therapeuticsの地中海貧血および鎌状赤血球症の治療に用いられるCRISPR-Cas9システムと、それをカバーする特許群として比較検討しても面白いかもしれません。
振り回される植物特許@欧州
植物に関する知的財産権としては、主に育成者権または特許権が存在する。
ただし、育成者権に関連するUPOV条約では、かつて育成者権および特許権による植物新品種の二重保護を認めていなかったため、その名残で、特許権による植物品種の保護を現在も認めていない国が多数存在する。
欧州も特許権による植物新品種の保護を認めておらず、Article 53 (b) EPCでは「植物品種」を特許の対象外として規定している。ただし、「植物品種」は植物の現物を意味するため、植物の概念(ex. 変異遺伝子を有する植物)は、特許の対象となっており、GM植物に関する特許権は多数成立していた。
また、Article 53 (b) EPCでは、植物品種以外に、本質的に生物学的な方法(伝統的な交雑・選抜による育種方法)等も特許の対象外として規定している。
食用植物のマーケットにおいて、GM植物が受け入れられているマーケットは米国等の少数の国であり、植物の新品種の開発は、依然として交雑および所望の形質の植物を選抜するという伝統的な育種方法を用いて行われている。
また、動物と比較して植物の遺伝子解析の難易度が高いこともあり、所望の形質を有する植物を新たに作出したとしても、形質に関連する遺伝子により所望の植物を特定することは難しいという問題があった(現在は状況がかなり変わっている)。
このため、欧州において植物新品種を保護する特許を取得しようとする場合、その製造方法、すなわち、伝統的な育種方法により特定するクレーム(いわゆる、プロダクト・バイ・プロセスクレーム(PBPクレーム))により植物を特定することが実務上行われてきていた。
ただし、PBPクレームの場合、上記のように交雑および選抜工程を含む方法により植物を特定するため、クレームの文言上、本質的に生物学的な方法を含むという問題があった。
この点については、トマト事件およびブロッコリー事件において争われ、法令解釈上、PBPクレームは、Article 53 (b) EPCの本質的に生物学的な方法に該当しないと判断されている(G2/13、G2/12)。
この結果、伝統的な育種方法により作出された植物新品種をPBPクレームにより権利化するという実務が定着した。
この点に関して、上記審決後に農家団体がロビー活動を活発化させ、結果としてRule 28 (2) EPCの規則改正が昨年行われた。
この結果、PBPクレームによる権利の道をが閉ざされたことについては、下記のエントリーの通りである。
困ったのが、伝統的な育種方法により作出した植物の保護ができなくなった種苗メーカーである。特に大手種苗メーカーであるモンサント社およびシンジェンタ社は、多数の出願を行っており、Rule 28(2) EPCが問題となった複数の出願において、この点を争点化していた。
争点としては、新たに制定されたRule 28(2) EPCは、Article 53 (b)に抵触するのではないかという点、すなわち、新たな規則が法令に矛盾するのでは中という点である。
多数(?)の関係者が経緯を注視している中で、この点に関する審判部の判断がシンジェンタ社の特許出願に関する昨年12月の口頭審理において明らかとなった(EP2753168、T1063/18)。
結論としては、新たなRule 28(2) EPCがArticle 53 (b)と矛盾するという判断が下され、シンジェンタ社の主張が認められた。
さて、今後であるが、法令は規則の上位にあり、優先されるため、新たに制定されたRule 28(2) EPCは無効化されることなる。
この結果、PBPクレームによる植物の権利化については、一時的にRule 28(2) EPC改正前の状況に戻ることになる、すなわち、PBPクレームによる植物の権利化が認められることとなる。
ただし、EPOの審査官によれば、今回の審判部の判断を受け、新たなRule 28(2) EPCが制定されるまではPBPクレーム対する判断基準が確立していないため、審査はストップする予定とのことである。
ということで、欧州における植物特許の実務については、トマト事件およびブロッコリー事件の審決後の状況に戻りそうな情勢であるが、しばらくは状況を注視する必要がありそうである。(まさかの欧州特許条約の改正とかやめてほしいわ…)