論文の残滓

特許実務に関するあれこれ。

Sequential class switching is required for the generation of high affinity IgE antibodies.

Huizhong Xiong, Jayashree Dolpady, Matthias Wabl, Maria A. Curotto de Lafaille and Juan J. Lafaille

J.E.M. 209, 353-364 (2012)

 

high affinity IgEの形成経路のお話。

f:id:nannosono:20120515184048j:plain

・前回書いたがIgEのCSRには2つの経路がある(上図)。

 ・IgEのCSRをする際に、S regionで組換えが起こるが、どこで起こるかは一定でないので、2段階でCSRをする際にSμ、Sεに加えてSγ1がCSR後のゲノムに残ることがある。また、このSγ1の残存は2段階CSRした細胞の指標ともなりうる。

・筆者等は以前の論文でIgG1+細胞の中にμ-ε鎖のpost-switched transcriptを持つ物が多く存在することを報告している。また、IgE+のGC Bが観察されなかったことから、IgE+細胞はIgG1+細胞から出てくるというIgG1 center modelを提唱していた。(IgE+ GC B細胞が存在することは前回のNat.Imm.の論文の通り)

 

著者等はGC中のaffinity maturationの起きたIgG1+細胞からIgE+細胞が出てくることを示すことを目的とした。秀逸なのは組換え後のS region中のSγ1の残存、muatationの数に注目したことであろう。また、Iγ1を潰したマウスを用いることにより、μ→γ1へのCSRが高親和性のIgE産生に重要であることを示している。

 

IgEにCSRしたGC B細胞が存在することはNat.Imm.論文から示されていることから、IgG1+ GC BはIgE+ GC BへとCSR後、PC、memory Bに分化されることが示唆される。気になる点としてはIgE+ GC Bでは何故さらにSHMによるaffinity maturationが起きないかという点であろう。IgMとIgG1との比較から細胞内領域違いがBCR架橋時のシグナル伝達に影響するという話があったりするので、IgEの細胞内領域も他クラスとは別のシグナルを使っているのかもしれない。また、現状ではIgEを介したシグナルが入るとPCへの分化のみが起こるように見えるので、BCR下流のシグナル比較により、B細胞のfate decisionがどのようなシグナルによって制御されているか明らかになる可能性もある(妄想)。何にせよ、余り研究が進んでいない領域であるので、今後が楽しみである。

 

 

f:id:nannosono:20120516190757j:plain

二報分をまとめると、現状ではIgE+細胞の産生というのはこういう風になっていると今のところ推測される。