話題のエボラウイルス治療薬の特許
某大学の先生が製薬企業が開発してくれないので、自分で開発する。自分で開発するにあたり、前臨床試験に用いる資金がないので、クラウドファンディングをするということです。
ビジネスをするつもりであれば特許があるでしょうし、関連する特許を調べてみました。
ベンチャー作ってみればいいのではないかという気もしますが。
(追記)関連ベンチャーがありました。
なお、シーズとして面白いものの製薬企業が導入しないのは、だいたい何らかの理由があります。
先生の話に基づけば、抗体と化合物の2種類の特許を出願されているようです。
調べたら簡単に見つかりました。
・抗体特許
出願番号:PCT/JP2016/074146
発明の名称:全てのエボラウィルス種の感染性を中和するモノクローナル抗体
移行国:CA、CN、EP、US、JP
韓国のタンクで製造して、アフリカに輸出すれば特許権回避…!
国際調査見解書を確認する限り、下記請求項2で特許性が認められているため、クレームとしても広いです。記載要件は指摘される可能性があります。
【請求項2】
エボラウィルスの表面糖タンパク質(以下、GPと略記する)の内部膜融合ループを認識し、
前記GPの内部膜融合ループを認識されるエボラウィルスが、ザイールエボラウィルス、スーダンエボラウィルス、ブンディブギョエボラウィルス、レストンエボラウィルスおよびタイフォレストエボラウィルスの全てのエボラウィルスである、エボラウィルスの生物活性を中和し得るモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
実施例を確認する限り、取得された抗体は1種類(6D6)のみです。
IC50は以下のとおり。
ザイール: 0.12 μg/ml
スーダン: 0.19 μg/ml
ブンディブギョエ: 0.24 μg/ml
タイフォレスト: 0.33 μg/ml
レストン: 0.62 μg/ml
(参考)シンポニー(抗TNFα抗体):3.2 ng/ml
・化合物特許
出願番号:特願2017-71729、PCT/JP2018/013581
発明の名称:フィロウイルスの細胞侵入阻害活性を有するビアリールスルフォンアミド誘導体
移行国:移行未
国際調査見解書を確認する限り、下記請求項4に限定すれば、特許性が認められるようです。ただし、効果を確認しているのは、請求項7に列挙されている化合物の一部です。
式(I):
[化1]
式中、
R 1は、H、Hal、AlkまたはOAlkであり、
R 2は、NO 2、AlkまたはArであり、
R 3は、
[化2]
であり、
ここで、
nは、0~5のいずれかであり、
R 5~R 8は、それぞれ独立して、H、AlkまたはCOOAlkであり、
Xは、CH 2またはOである、
R 4は、
[化3]
またはナフチル基であり、ここで、
R 9は、H、Hal、AlkまたはOAlkである、
ここで、
Alkは、それぞれ独立して、炭素数が1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
Halは、それぞれ独立して、ハロゲンであり、
Arは、それぞれ独立して、Halによって置換されたアリール基である、
で表される化合物もしくはその水和物または当該化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはその水和物。
化合物番号4-17、4-20、4-21、4-27については、IC50も調べており、IC50は以下のとおり。
ザイール: 約50 nM
スーダン: 約300 nM
ブンディブギョエ: 約50 nM
タイフォレスト: 約0.5-1 μM
レストン: 約1 μM
(参考)タミフル:0.1-3 nM
シーズとしては面白いですが、最適化ができていない印象を受けます。
製薬会社としては出願以前の段階で自社で練り直したいところでしょうね。