論文の残滓

特許実務に関するあれこれ。

欧州における動植物関連出願の審査・審理停止

2017年に改正されたRule 28(2) EPCについては、以前アップしたように、Article 53(b)の解釈に関するブロッコリ事件・トマト事件における拡大審判部の判断と抵触するとの判断が審判部から示されました。

 

nannosono.hatenablog.com

欧州特許条約上、規則が法令に抵触すると法令が優先されるため(Article 164(2))、規則は実質無効化されます。

また、一般的な育種方法、いわゆる、交雑・選抜を繰り返す方法で生み出される動植物の特許出願の審査及び審理においては、Article 53(b)+Rule28 (2)がかなり大きな問題となっているため、規則が無効化されたことで、審査・審理が止まるであろうと想定されていました。

そして、ついにEPOから正式に審査・審理の停止がアナウンスされました。

 

www.epo.org

審査・審理の停止は、EPOの長官から拡大審判部に対して、Article 164(2)に基づいて、Rule28 (2)がArticle 53(b)と整合性がとれているかとの質問に対して,拡大審判部の回答が得られるまででであるため、おおよそ2-3年は続くことになると想定されます。

EPOの審査は遅いので、今、EPOにpendingしている案件については、下手をすると、審査・審理のけりが付く頃には特許権の存続期間はほとんど残ってないかもしれませんね…笑

 

なお、サーチに関しては引き続き行われますので、拡張SRは通常どおり発行される考えられます。

 また、クレームがGMの動植物に関することが明確である場合、そもそもArticle 53(b)+Rule28 (2)の規定とは関係ないため(審査ガイドライン G-II 5.4 Plant and animal varieties, essentially biological processes for the production of plants or animals、特に、5.4.2.1参照)、審査・審理は停止しないことになります。