論文の残滓

特許実務に関するあれこれ。

Transcriptional factor IRF4 determines germinal center formation through follicular T-helper cell differentiation

Nadine Bollig, Anne Brüstle, Kerstin Kellner, Waltraud Ackermann, Elfadil Abass, Hartmann Raifer, Bärbel Camara, Cornelia Brendel, Gavin Giel, Evita Bothur, Magdalena Huber, Christoph Paul, Alexandra Elli, Richard A. Kroczek, Roza Nurieva, Chen Dong, Ralf Jacob, Tak W. Mak, and Michael Lohoff

P.N.A.S. A.O.P

 

上げるの忘れ取った…。

 

年度末に投稿されたPNASでしかもcontributedは胡散臭さが半端無いですね。

IRF-4がTfhの分化に関与しているかもしれないよという論文。

 

・IRF-4はPCの分化に必須の転写因子

・T、Bの初期分化にも必要

・無いとTCR,BCRを介した増殖応答等が低下する

・Th2 typeのTregのSuppression能に必要、Th2,9とかの分化にも必要

 といった様に多機能の分子。

 

今回、GC形成について焦点を当ててやってみました。

L.majorを感染させる系で見たところ、GC形成が起きず、これはWT CD4+T細胞を戻すことで回復するよということが分かりましたよということだそうです。conditional KOを何故使わなかったのか?TD抗原にMOG peptideをなんで使っているのか?等色々怪しいデータの出し方をしていますが、GC形成には何らかの形で関わっているのでしょう。

 

Tfhの分化にとまでタイトルに書いてありますが、元のT細胞があれなので本当にTfhに分化できないのか?それともそれ以前に何か問題があるのか?もはっきりしません。ただ、IRF-4とBcl-6はIL-21の産生誘導に強調して働いているといった報告もあるので、TfhのComittmentではなくDifferentiationに関わっていると言うことはありうりそうな話ではあります。誰かちゃんと確認取ってくれないかな−。

Sequential class switching is required for the generation of high affinity IgE antibodies.

Huizhong Xiong, Jayashree Dolpady, Matthias Wabl, Maria A. Curotto de Lafaille and Juan J. Lafaille

J.E.M. 209, 353-364 (2012)

 

high affinity IgEの形成経路のお話。

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・前回書いたがIgEのCSRには2つの経路がある(上図)。

 ・IgEのCSRをする際に、S regionで組換えが起こるが、どこで起こるかは一定でないので、2段階でCSRをする際にSμ、Sεに加えてSγ1がCSR後のゲノムに残ることがある。また、このSγ1の残存は2段階CSRした細胞の指標ともなりうる。

・筆者等は以前の論文でIgG1+細胞の中にμ-ε鎖のpost-switched transcriptを持つ物が多く存在することを報告している。また、IgE+のGC Bが観察されなかったことから、IgE+細胞はIgG1+細胞から出てくるというIgG1 center modelを提唱していた。(IgE+ GC B細胞が存在することは前回のNat.Imm.の論文の通り)

 

著者等はGC中のaffinity maturationの起きたIgG1+細胞からIgE+細胞が出てくることを示すことを目的とした。秀逸なのは組換え後のS region中のSγ1の残存、muatationの数に注目したことであろう。また、Iγ1を潰したマウスを用いることにより、μ→γ1へのCSRが高親和性のIgE産生に重要であることを示している。

 

IgEにCSRしたGC B細胞が存在することはNat.Imm.論文から示されていることから、IgG1+ GC BはIgE+ GC BへとCSR後、PC、memory Bに分化されることが示唆される。気になる点としてはIgE+ GC Bでは何故さらにSHMによるaffinity maturationが起きないかという点であろう。IgMとIgG1との比較から細胞内領域違いがBCR架橋時のシグナル伝達に影響するという話があったりするので、IgEの細胞内領域も他クラスとは別のシグナルを使っているのかもしれない。また、現状ではIgEを介したシグナルが入るとPCへの分化のみが起こるように見えるので、BCR下流のシグナル比較により、B細胞のfate decisionがどのようなシグナルによって制御されているか明らかになる可能性もある(妄想)。何にせよ、余り研究が進んでいない領域であるので、今後が楽しみである。

 

 

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二報分をまとめると、現状ではIgE+細胞の産生というのはこういう風になっていると今のところ推測される。

IgE memory B cells and plasma cells generated through a germinal-center pathway

Oezcan Talay, Donghong Yan, Hans D Brightbill, Elizabeth E M Straney, Meijuan Zhou, Ena Ladi, Wyne P Lee, Jackson G Egen, Cary D Austin, Min Xu & Lawren C Wu

Nat.Imm. 13, 396-403 (2012)

 

 

 IgE+ Bがどこから来るかというお話。

・naive B細胞がCSRをする場合はIgM→IgE or IgM→IgG1→IgEの2つの経路(IgG1、IgEへのCSRにはIL-4が関与しているため連続的にCSRすることが可能)。

・現在のところIgE+Bの分化には後者の経路がメインで働いていると考えられている(IgG1 center model)。

・IgE+ B細胞の検出には、酸性条件下においてIgEのCD23(low affinity IgE receptor)からのストリッピング→anti-mIgEによる染色という、結構無茶苦茶な条件が用いられている。

・上記の手法を用いた際にIgE+ GC Bやmemory Bが検出されていないためIgG1細胞がIgEにスイッチ後すぐPCに分化し、抗体産生を担っているとされているが真偽不明。

 

今回、筆者等は膜型IgEを発現する細胞にのみGFPが発現するマウスを作成し、GFPの発現を指標とすることで、IgE発現細胞の分化について検討した。IgE発現細胞においても、他のクラスのB細胞と同様にGC B細胞、memory B細胞が存在すること、二次応答時のIgEのソースのメインはIgG1+ memoryではなくIgE+ memoryであることを示している。またIgE+ memoryはGC Bには分化せず、PCにのみ分化するようだ。ということで、従来考えられていたようにIgG1+ B memory or GC Bが途中に介在し…、ということでは無さそうだということが明らかとなったそうな。

 

ただし、GC independetにIgEにCSRしているmemoryの影響や、GC中でIgG1+の中間状態を取っているものがいないかどうかについては検討されていないため、筆者達がまとめに書いているようにGC内でIgM→IgEなの?というところには疑問がつきます。実際、そうではないんじゃねと示唆する論文もあるので、次はそれを。

 

The Inhibitory Receptor PD-1 Regulates IgA Selection and Bacterial Composition in the Gut.

The Inhibitory Receptor PD-1 Regulates IgA Selection and Bacterial Composition in the Gut.

Shimpei Kawamoto, Thinh H. Tran, Mikako Maruya, Keiichiro Suzuki, Yasuko Doi, Yumi Tsutsui, Lucia M. Kato, and Sidonia Fagarasan

Science 336, 485-489 (2012)

 

・免疫抑制因子として種々の自己免疫疾患への関与が報告されているPD-1の働き@腸。

・PD-1の腸内環境への影響をPD-1KOを用いて解析した。

・PD-1は腸内細菌叢のコントロールに重要。

 

全体的に表現系報告に近い物

 

Tfh上のPD-1が欠損することで、Tfhの機能異常がおきる。その結果、GCのturnoverがおかしくなり、affinity maturation (clonal selection)異常が起きている。結果として、細菌叢が…というのが筆者の描いたストリーであろう。

が、細菌叢の存在により末梢のPB、PCの細胞死が誘導されることから、LPでselectionが起きてるとか、色々データからの飛躍が非常に多い論文なのでうーんという感じはするが、免疫抑制機能分子として認識されていたPD-1が"active"に制御しにいっていうという点が新しいのでしょう。今後、PD-1のTfhでの分子機能がちゃんと分かると面白いでしょうね。

 

・Foxp3+からconversionしたTfhのfunctionはほとんど異常が見られなかったこと。

がデータの中では気になるところ。入れたT細胞のTCRレパトワに偏りがあるだけかもしれませんが、異なるsubsetだったりすると面白そう。

 

SupFig4は完全にいらない子。なんでこんなデータひっつけた上にデータから言えてないことを書いているのか?レフリーが何も言わなかったのが不思議。

 

An IL-9 fate reporter demonstrated the induction of innate IL-9 response in lung inflammation.

Wilhelm, C. et.al., Nat.Imm., 12, 1071-1077 (2012)

 

・IL-9は喘息、気管支炎等の肺の炎症、寄生虫の排除にも関与している。しかし、IL-9産生細胞は同定されていない。

(IL-9のintracellular stainigは難しいという技術的問題がある。今回の結果をみると産生がtransientだからかもしれない)

・-IL-9-cre x -Rosa-Stop-YFP mouseを作成し、IL-9を産生してた細胞を同定することにした。

・papainを4回i.n.で投与することでTh2 typeの肺炎を誘導し、その時の産生細胞を探した。

・YFP+細胞はLin- Thy1+ IL-33R+ IL-7R- c-Kit-/ CD25、MHCII、Sca1の発現はヘテロ→Innate lymphoid cell

・intra stainingからILCのIL-9産生は一過的であること、またIL-5、IL-13を産生することが明らかに。

・ILCがIL-9を産生するのにはadaptive cellによるIL-2が必要。

・IL-9の産生に関与するとされているIL-25、IL-33はILCの肺へのrecruitに関与している。

(IL-9の産生も誘導している気はする)

・ILCが作るIL-9自体はILCがIL-5,13を産生すること、またILCのphenotype変化に必要であった。

 

in vitroの結果ではT細胞がIL-9を作るということが報告されていた。

今回はin vivoで実際にIL-9を産生している細胞が同定できたことが目新しい。

Muscal memory CD8+ T cells are selected in the periphery by an MHC class I molecule

Huang, Y. et. al., Nat.Imm. 12, 1086- 1095 (2012)

 

腸管上皮にいるTrmのselectionにthymus leukemia antigen (TL)が関与していた。

筆者等はCD8+ T cellのaffinity maturationが起こっていると書いているが完全に間違い。

affinity selectionが正しい。TCR遺伝子へのmutationが起こっている証拠はなし。

 

 memory T cellやB cellが病原体の侵入経路に存在すると速やかな二次応答が起こる。

最近、皮膚、粘膜組織に局在するmemoryが二次感染時のクリアランスに重要であることが報告されている。

Trmの分化については比較的分かりつつあるが、どのようなTrmが、またTrmどのように選ばれてくるかは分かっていない。

 

腸管上皮にいるCD8αβ memory T cellはCD8ααも発現している(CD8αα+ CD8αβ+ memory T cell)

このCD8ααのリガンドが今回出てくるTLであり、TLは腸管上皮に恒常的に発現していることが報告されている。(一部APCはinducible)

そこでTLがCD8αα+ CD8αβ+ memory T cellのselectionに関わっているのではないかということでTLの機能について調べた。

 

CD8+ memory T cellの誘導にはListeria monocytogenesを経口感染させる系を用いている。(memoryの解析は基本的に感染2ヶ月後)

TL KOではIEL中のCD8+T memoryの増加が、TL OEではCD8+ T memoryの減少が観察されることから、TLはCD8+T memoryの形成を負に制御していることが明になった。

 

定常状態でTLを発現している細胞はmLNのCD103+ migratory DC。

CpG刺激を加えると発現強度は上昇する(Sp DCでも発現が誘導される)

 

TLのmemory形成の阻害はCD8+ T cell上のFasを潰すと打ち消されることからFas-FasLによるapoptosisが効いてそう。

 

ではmemory CD8+ T上に発現しているCD8ααは何か関与しているのか?

ΔE8i OT-1 T細胞を使用して検討

ΔE8i:CD8αのエンハンサー領域Iを削ったマウス。CD8ααの発現に必要

ΔE8i OT-1 T細胞はWT OT-1 T細胞に比べてin vitro、in vivo共に死にやすい(経口感染の場合)。

全身感染の場合は差が無い(以前のLCMV感染の報告と同様)

また、ΔE8i OT-1 T細胞はmemory phaseでのIELの蓄積↓

TL-CD8ααがCD8 memory T細胞のIELへの関与していることを示唆している。

 

CD8ααの発現上昇に関与しているのはTCR+共刺激の強さ。

affinityが強ければ同じ刺激に対してもaffinityが高いものの方がCD8ααの発現高い

in vivoでもaffinity高いT細胞の方がIELにmemory CD8+ T細胞として残りやすい。

→affinity selectionがおきてんじゃね?

(humanでもCD8ααはeffector memoryに出てる。)

 

腸管によくあるRAとTGF-βはCD8ααの発現を増強する

 

最後に色々やってるけど、controlがないから、このデータからはTLがaffinity selectionに関与しているとは言えない。

データ自体もFig.1のデータとconflictしてる。

抗原に対するaffinityが下がってるならFig.1のIELより%は落ちないといけないが、全く下がっていない。

 

T細胞が活性化時受ける刺激の強度によりCD8ααの発現強度が決まる。

CD8ααの発現が高いと、活性化時にAPC上にあるTLによる細胞死から逃れやすく、またIELでのsurvivalも↑するため、Trmとして残りやすくなる。

Regulated release of nitric oxide by nonhematopoietic stroma controls expansion of the activated T cell pool in lymph nodes.

Lukacs-Kornek, V. et.al., Nat.Imm., 12, 1096-1104  (2012)

 

雑誌紹介用

リンパ器官のStormal cellは主に2種類いる

Fibroblastic reticular cell (FRC)とLymphatic endothelial cell (LEC)

 

FRC (CD45-gp38+CD31-)

stromaの中で最大

網状のネットワークを作成

定常状態ではCCL19、21の産生、接着分子の発現を通じてリンパ球のmigrationに関与

炎症時には抗原のdeliveryにも関与しているという報告もある。

 

LEC (CD45-gp38+CD31+)

2番目に多い細胞集団

S1Pの産生をしており、リンパ球が出て行くのに関与

リンパ節のCortex側に多い

 

これらのStromal cellのT細胞増殖への影響をin vitroで検討した。

DC、anti-CD3+CD28の系のどちらでもstroma (FRC、LECのどちらでもOK)が存在するとT cell proliferation↓ (CD4+、CD8+両方)

DCを介したSuppressionではない

 

T cell proliferationは落ちるものの、T細胞は抗原刺激後、IFN-γを作る

stroma上のIFNGRを介しNOS2の誘導、NOの産生がT細胞増殖の抑制に関与

NOS2の誘導、NOの産生はIFN-γ以外にもTNF-α、T cell-stroma cellのcontactが必要。

 

CD8T細胞の場合、Stromaにpeptideをpulsして提示させた場合もproliferation↓

 

in vivoでの影響の確認

iFABP-tOVA WT or NOS2-/- マウスにOT-1を移入し増殖を見る

iFABP-tOVA:IEC、FRCにtruncated OVAが発現するマウス

iFABP:Intestinal fatty acid-binding protein promoter

 

iFABP-tOVA NOS2-/-マウスではmLN(not sLN)でのOT-1の増殖が見られた。

in vivoでも効いているかも?

peripheral torelanceを想定しているのか?