論文の残滓

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仁義なき特許戦争 CRISPR-CAS9編@雑談

バイオ系の大元を押さえる特許は、それを用いたリサーチツールや医薬品等の幅広い製品をカーバする特許となるということで、すごいお金になる特許でもある。

PCR、遺伝子組み換え技術、siRNA等の特許をみても、その特許を件をライセンスしている某社のライセンス収入はかなりの額…。

このため、バイオ系ではブレークスルーがあった際に、いかに早く、広く、ビジネス展開を見据え、且つつぶされないように特許のポートフォリオを組むかは非常に重要となってくるのである。

ここがうまくできないと金にならない。

このようなブレークスルーの多くは大学の研究により起こることが多い。

が、日本の大学の知財部はお世辞にも優秀とはいえないため、これはすごいというような発明があってもそれをうまくビジネスに使えるように特許化できているケースはレアケース…。

iPS細胞関連は頑張ってほしいものである。

 

さて、そんなブレークスルー関係の特許で目下いろんな人の耳目を集めているのが、ゲノム編集のツールであるCRISPR-CAS9関連特許である。

ノーベル賞級の発見ということで、CRISPR-CAS9に関する特許も米国を始め、日本、欧州の大学、企業等から出願されている。

日本政府も尻馬に乗って参入する気満々であるが、ライセンス料を搾り取られるだけにならないことを願う。

先日お客さんから、どこが大元握りそうですかとの質問があったのにあわせて、ばらばらに持っていた情報を少し整理してみた。

 

特許制度では、同じ発明について複数人が出願した場合、一番最初に出願した人が基本的に特許をもらえる(少し前までの米国を除く)。

このため、大元の特許を握るには一番最初に出願する必要があるということで、初期の出願人を検討してみた。

大元の特許となりうる初期の出願の出願人は、今のところ3機関であり、リトアニアのVILNIUS大学、米国のカリフォルニア大学等、米国のブロード研究所等であった。

(ちなみに、VILNIUS大学は今回初めて知ったので、まだまだサブマリンしていて浮上してくる出願はあるかもしれない。)

各出願人の出願は、以下の通り。

ファミリーも見られるようにEspacenetのアドレス付き!

 

VILNIUS大学の出願

US2015045546 (A1)のファミリー出願

出願日:2013/03/20

優先日:2012/03/20

対応JP出願:特願2015-501880(審査請求済、OA未送達、情報提供有)

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=2015045546A1&KC=A1&FT=D

 

カリフォルニア大学ら(+ヴィエナ大学)の出願

US2014068797 (A1)のファミリー出願

出願日:2013/03/15

優先日:2012/05/25

対応JP出願:特願2015-514015(審査請求済、OA未送達、情報提供有)

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=2014068797A1&KC=A1&FT=D

 

ブロード研究所ら(+MIT、ハーバード大学)の出願

(1)US8697359 (B1)のファミリー出願

出願日:2013/12/12

優先日:2012/12/12

対応JP出願:特願2015-547555(未審査請求)

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=8697359B1&KC=B1&FT=D

 

(2)US8795965 (B2) のファミリー出願

出願日:2013/12/12

優先日:2012/12/12

対応JP出願:特願2015-547530(未審査請求)

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=8795965B2&KC=B2&FT=D

 

(3)US8865406 (B2)のファミリー出願

出願日:2013/12/12

優先日:2012/12/12

対応JP出願:特願2015-547545(未審査請求)

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=8865406B2&KC=B2&FT=D

 

(4)US8889356 (B2)のファミリー出願

出願日:2013/12/12

優先日:2012/12/12

対応JP出願:無

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=8889356B2&KC=B2&FT=D

 

(5)US8906616 (B2) のファミリー出願

出願日:2013/12/12

優先日:2012/12/12

対応JP出願:特願2015-547573(未審査請求)

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=8906616B2&KC=B2&FT=D

 

(6)US8993233 (B2) のファミリー出願

出願日:2013/12/12

優先日:2012/12/12

対応JP出願:無

http://worldwide.espacenet.com/publicationDetails/biblio?CC=US&NR=8993233B2&KC=B2&FT=D

 

優先日の順序のみに基づくと、VILNIUS大学が広くとれそうであるが、出願内容を見る限り、CRISPR-CAS9で遺伝子編集する技術全体をとるのは難しそうである。

ということで、VILNIUS大学がある程度の大きさの特許を押さえ、カリフォルニア大学が残りの隙間を埋め、さらに、細かい部分をブロード研究所の特許が押さえるのではなかろうかと予想している。

ま、代理人の手腕次第な部分もあるので、どう落ち着くかは現状不明であるが。

 

また、米国では、カリフォルニア大学とブロード研究所との間で争いが勃発し、ブロード研究所の多数の特許に対し、カリフォルニア大学がインターフェアレンス(発明日の先後を争う制度)を宣言し、現在USPTOで審査中。

この争いの行方はいかに!?ということころであるが、VILNIUS大学が参入したので、さらに争いが拡大しそうな雰囲気である。

 

こんな面白い仕事の対応日本出願を担当しているのは以下の事務所ということで、今後どのような戦略を組んでくるのか、特に後願を担当する代理人の戦略が非常に楽しみである。(他人事)

志賀国際はコンフリクトしてたんじゃ…?!

 

VILNIUS大学:志賀国際特許事務所→特許業務法人谷・阿部特許事務所

カリフォルニア大学:アンダーソン・毛利・友常法律事務所

ブロード研究所:志賀国際特許事務所