論文の残滓

特許実務に関するあれこれ。

特許料の納付期限の延長 (US)

USで日本の108条3項のような規定があるか探したところ無い模様…。

Allowanceから3ヶ月もあるので、延長する必要性もないのでしょう。

 

MPEP 1036 Issue Fee [R-08.2012] 最終パラグラフ

“The Director has no authority to extend the time for paying the issue fee. Intentional failure to pay the issue fee within the 3 months permitted by 35 U.S.C. 151 does not amount to unavoidable or unintentional delay in making payment.”

 

ディレクターは、発行手数料を納付するための時間を延長する権限を有さない。151条により特許許可されてから3ヶ月以内に故意に発行手数料を納付しなかった場合、納付する際の不可避または故意でない遅延とはならない。

 

三極比較 スニップおよびハプロタイプに関する比較研究

書籍用に三極比較の資料の翻訳されていないパートについて、おおざっぱに翻訳した。

記録がてらに、ざっくり整理したものをおいておきます。

なお、全体に目を通した後の校正は行っていないため、内容は保証致しかねます。

 

元の比較研究報告内容のpdfは下記のアドレスです。

http://www.trilateral.net/projects/biotechnology/Haplotypes.pdf

 

1.三極比較の目的

 SNPおよびハプロタイプに関する発明についての検索戦略および発明の対比に関する課題、ならびに単一性、明確性、開示の十分性(実施可能要件、サポート要件、記述要件)、および産業上の利用可能性(有用性)を判断する上での課題を明らかにすることを目的とする。

 

2.事例

(1)SNPに関する事例

①明細書の開示内容

 出願は、生物学的経路上にある既知の遺伝子(配列番号1)において、8個の一塩基多型の発見したことを開示している。多型は、多型1-8として同定されている。前記明細書は、配列番号1における多型部位の位置、および前記多型位置に存在する可能性のある塩基を示す表Aを記載している。各SNPの対立遺伝子1は、既知の配列において存在している対立遺伝子であるが、対立遺伝子2は、新たに発見された多型対立遺伝子である。前記出願は、さらに、疾患Xの存在と関連する多型1−3の対立遺伝子2が存在することを証明している。前記明細書は、多型4−6に関していずれかの対立遺伝子の存在と疾患Xとが関連しないことを示唆するデータを開示している。前記明細書は、多型7−8のいずれかの対立遺伝子の存在と疾患Xまたはその他の病気との関連性については、開示していない。

 

②検索結果

 配列番号1は、先行技術において知られている。

 先行技術は、配列番号1のいずれかの一塩基多型も教示していない。

 

③クレーム

【請求項1】

下記の位置の1つにおける1つの多型変化を除き、配列番号1を含む単離された核酸:

配列番号1のヌクレオチドから変化する多型の位置。

1 10 G

2 27 A

3 157 C

4 234 T

5 1528 G

6 3498 C

7 13524 T

8 14692 A

 

【請求項2】

以下の工程を含む、患者における疾患Xの存在を検出するための方法:

a)患者から除去された試料から核酸を単離、および

b)請求項1記載の表に列挙した1以上の多型位置に存在する塩基を検出し、前記多型位置において、請求項1記載の表で特定された塩基が存在する場合、前記特定の疾患が存在することを示す。

 

(2)ハプロタイプに関する事例

①明細書の開示内容

 前記明細書は、3267塩基長であり、先行技術において知られている公知の遺伝子X(配列番号1)の5つのハプロタイプを開示している。一連の変異体(ハプロタイプ1−5)は、ヒトDNA塩基配列決定プロジェクトにより同定されている。各ハプロタイプは、前記遺伝子内において、7つの異なる多型位置の特定の組合せを表している。前記明細書は、各ハプロタイプ内において、各多型位置における前記塩基を同定したことを示す表を開示している。前記表は、前記多型のいずれか、または全てが、遺伝子Xによりコードされるタンパク質内において、アミノ酸置換を引き起こすか否かも示している。

 前記明細書は、疾患Xの患者がハプロタイプ1または5を有す場合、ハプロタイプ2、3または4を有す場合に対し、前記患者が、疾患Xに作用する薬剤Yに対して、より治療効果を示すことを証明したデータを開示している。疾患Xとハプロタイプ2、3または4との関連性はない。

 

②検索結果

 先行技術は、配列番号1およびハプロタイプ1が当該技術分野で知られていることを開示している。

 

③クレーム

【請求項1】

ハプロタイプ1、2、3、4および5からなる群から選択された単離された核酸分子であり、ハプロタイプ1−5のそれぞれが、各ハプロタイプについて下記表で特定した塩基が、配列番号1内の対応する位置に存在する点を除き配列番号1を含む。

 

位置

ハプロタイプ1

ハプロタイプ2

ハプロタイプ3

ハプロタイプ4

ハプロタイプ5

23

A

T

A

A

A

47

G

G

C

C

G

89

G

C

C

G

C

213

C

C

C

G

G

605

T

A

T

A

T

788

A

G

A

G

A

1592

G

G

G

G

C

 

【請求項2】

以下の工程を含む、個体における遺伝子Xのハプロタイプ決定のための方法:

(a)個体から除去された試料から核酸を単離する

(b)配列番号との比較により、位置番号が決定される、遺伝子Xの前記個体のコピーの位置23、47、89、213、605、788および1592に存在する塩基の存在を決定し、前記位置番号は、配列番号1との比較により決定される

(c)前記位置に存在する塩基と、請求項1記載の表のハプロタイプとして記載した塩基とを比較することにより前記個体に特定のハプロタイプを付与する

 

(3)事例1および2の要約

例 1

SNPの参照配列番号は新規でない。

 

SNP #

表現型との関連性?

新規?

1−3

正の相関

Yes

4−6

相関無し

Yes

7−8

不明

Yes

 

例 2

ハプロタイプの参照配列番号は新規でない。

ハプロタイプ #

表現型との関連性?

新規?

正の相関

No

2、3および4

負の相関

不明

正の相関

不明

 

 

2.検索戦略に関する課題

 検索戦略に関して、三極特許庁の判断は一致した。また、三極特許庁は下記の課題を見出した。

 

(1)SNPに関して

① 検索の範囲が単一性の欠如のため制限されうるか否かを最初に決定するに先立ち、発明の単一性を決定する必要がある。

② 配列(ここでは、配列番号1)による親分子を検索することに加え、審査官は、完全長配列およびオリゴマー検索の両方を使用し、親配列内の各個々の多型を検索する必要がある。

③ 一部のデータベースは、インターネット経由で検索可能であるが、これらのデータベースはクレームの発明の完全な検索を保証する担保に欠ける。

④ 審査官は、配列検索だけでなく、キーワード検索を行う必要がある。

⑤ SNP位置の単一ヌクレオチドの対立遺伝子は、様々な方法で、先行技術において定義/開示されうる。このような対立遺伝子は、一般的には、下記のいずれかよって定義/開示されている。

・遺伝子配列

・短い配列「識別子」、または

・参照配列に対するSNP部位の位置の表示および対立遺伝子を特定するヌクレオチド

⑥ 先行技術は、どんな個々の遺伝子またはタンパク質についても、命名、ナンバリング、または特徴づける標準化された体系を欠いており、遺伝子またはタンパク質が新たに、または最近発見された場合は特にそうである。

⑦ 先行技術および出願の間で問題となる、多型部位、および/または参照配列を開示/定義する方法の相違のため、テキストデータベースまたは配列データベースを使用した包括的な検索を行うことが困難となっている。

⑧ 配列番号1といった親配列は、検索可能なリスト中に存在している可能性はあるが、多型変異に関する情報は、データベース、または科学文献の表、グラフもしくは図内に、多くの場合埋め込まれている。

⑨ 請求項2は、親配列、クレームのSNP、および指定された疾患の間を関連付けるためのテキストベースの検索を必要である。

 

(2)ハプロタイプに関して

 前記(1)のSNPに関する課題に加え、三極特許庁は下記の課題を見出した。

 

①特に、ハプロタイプと薬物治療への患者の応答との関連性について検索する際に、適切なデータベースの選択が、課題となり得る。

ハプロタイプの検索は、単一分子内において、複数の多型ヌクレオチドの位置の存在の有無を検索する必要があるため、SNPの検索に対してより複雑である。

・しかしながら、先行技術と区別するのに依拠しうる複数の位置を仮定した場合において、多型内の任意の特定の位置が、一定のハプロタイプが新規であり非自明(進歩性あり)であると判断するのに十分であると分かったならば、新規で非自明の多型を有する任意のハプロタイプのさらなる検索を必要としないこともあり得る。

 

 

3.発明の対比に関する課題

 発明の対比に関して、三極特許庁の判断は一致した。また、三極特許庁は下記の課題を見出した。

 

(1)SNPに関して

① 変異をナンバリングするシステムにより、アライメントや、クレームの配列と先行技術の配列とを直接比較することが困難になる。

② 親配列が当技術分野で知られている場合、特定の多型自体を特定することに進歩性が伴うかどうかを決定する際に課題が存在する。

③ クレームの発明が、進歩性の要件を満たしているかどうかを決定する際に、審査官は、親配列と特定の疾患との間に、任意の既知の関連性があるかを考慮しなければならない。

(2)ハプロタイプに関して

 前記(1)のSNPに関する課題に加え、三極特許庁は下記の課題を見出した。

 

① 請求項2に係る発明が進歩性を伴うか決定する際に、特定のハプロタイプを個人に割り当てる段階で、特許性の程度をどの程度にするか決定しなければならない。

② 請求項2に係る発明が進歩性を伴うか決定する際に、クレームされた方法において比較される核酸配列情報が、同じ基本工程を有するが、異なる核酸配列上を比較している先行技術の方法とクレームとを区別するのに十分な特許性を有しているかどうか決定するという課題が存在する。

③ 請求項2に係る発明が進歩性を伴うかどうかを決定する際に、審査官は、当業者が疾患Xまたは薬物代謝に関連するハプロタイプを探索する動機付けがあるかどうかを決定しなければならない。

 

4.単一性の判断に関する課題

 単一性の判断に関して、三極特許庁の判断は一致した。また、三極特許庁は下記の課題を見出した。

(1)SNPに関して

① 単一の発明内に8つの多型を連結する概念が存在するかどうかを推定する際に、以下の特徴を考慮に入れた。

(a)クレームに記載の多型は、配列番号1内で全て発見されるという事実

(b)クレームの化合物の全てが、一塩基多型(SNP)を含んでいるという事実、または

(c)8つの多型は、同じ特定の疾患に関連しているかどうか。

② ここで、明細書において、多型4−6が疾患と関連性がないことを明示的に且つ明確に開示しており、また多型7−8と疾患Xとのいかなる関連性について全く言及していないため、疾患Xとの関連性が、8つの多型位置を連結する特別な技術的特徴を果たさない。

③ 配列番号1が既知の配列であると仮定した場合、配列番号1自体は、1つの発明において、8つの多型を連結する単一の一般的発明概念を表すことができない。1つの発明において、8つの多型を連結する概念が存在するか事後的に決定する際に、以下のいずれかが発明の単一性を確立するのに十分な一つの発明概念であるかどうかを決定するという課題が存在する。

(a)クレーム1および2の8つの多型位置が一塩基多型であるという事実。三極特許庁は、これは、単一の発明概念を確立するのに十分ではないことに同意する。または

(b)一または一群のSNPが、疾患の存在などの特定の表現型形質と関連すること。

o 特定の表現形質との「正」の相関性および/または「負」の相関性相関性の欠如とは逆)が、単一の発明概念を表すか否かを決定するという課題が存在する。

o 相関性が進歩性を伴うとしても、問題となる形質と関連がある全てのSNPにおいて、発明の単一性が存在するだろう。

§ 形質と関連しないSNPは、関連性を示すSNPと同じ発明には属さないであろう。

o 前記関連性が先行技術に対して貢献しないならば(例えば、新規性および/または進歩性欠如)、前記関連性は発明の単一性を確立するのに十分でない。または

(c)一または一群のSNPが、疾患の存在などの特定の表現型形質と関連すること、および代替の全てに共通する共通の構造または重要な構造要素が存在すること。

 

(2)ハプロタイプに関して

 三極特許庁は、前記(1)のSNPに関する課題と同じ課題を見出した。

 

 

5.明確性、開示の十分性(実施可能要件、サポート要件、記述要件)および産業上の利用可能性(有用性)の判断に関する課題

 明確性および記述要件に関して、三極特許庁は課題が存在しないとの判断で一致した。他方、実施可能要件、サポート要件および産業上の利用可能性(有用性)に関して、三極特許庁は、下記のように異なる課題を見出した。

 

(1)SNPに関して

(1-1)EPOの判断

① クレーム1に関連する調製などの分子の調製は当業者にとって一般的に行われていることであるため、サポート要件の観点からはクレーム1には、何ら課題が存在しない。しかしながら、疾患Xの存在が多型4−8の検出により検出できることを示したあらゆる種類の実験データが開示されておらず、また、一以上のSNPと特定の形質との間の関連性の確認は当業者にとって、一般的に行われていることでないため、クレーム2関して、出願はサポート(Art. 84 EPC)を欠如している。

② 特定のSNPが存在する親配列が新規で進歩性を伴わない限り、未同定のSNP、すなわちいかなる表現形質と関連性を証明されていないSNPは、通常、進歩性を欠如していると考えられる。したがって、未同定のSNPは進歩性を欠如しているため、前記SNPが産業上利用可能できるかどうかという問題に対処することが通常必要でない。

 

(1-2)JPOの判断

① 主張されているSNPを含む対立遺伝子と疾患Xとの関連性の科学的信頼性をどのように評価するかに関して課題が存在する。母集団内の様々なSNPの頻度間の差が、遺伝子Xと疾患Xとの間の関連性を科学的に十分証明できているか否かを決定する際にも課題が存在する。

② 疾患の存在との関連性を何ら開示していない対立遺伝子変異は、産業上の利用可能性および実施可能要件を欠如しうる。

 

(1-3)USPTOの判断

① クレーム1および2は、クレームの全範囲にわたって実施可能かどうか、すなわち、クレーム1および2のそれぞれについて記載されているクレームの多型が、過度の実験を行うことなく特定の、十分な且つ信頼性のある有用性を有しているか否かを決定する際に課題が存在する。

 

(2)ハプロタイプに関して

(2-1)EPOの判断

① クレーム1は、当業者が一般的な方法により取得できる核酸配列に関連するため、サポート要件の観点からはクレーム1には、課題は存在しない。

② クレーム2は、ハプロタイプを決定する方法に関する。出願は、クレーム2が関連し、ハプロタイプと共に規定される極めて多型の部位により特徴付けられる5つの特定のハプロタイプを開示し、また当業者は、クレーム2に関連する特定の位置にある塩基を特定するありふれた方法を必要とするのみであるため、サポート要件を満たしていることを示唆している。

③ クレーム1が関連する核酸配列は、例えば、クレーム2に関連する方法に使用可能であるため、クレーム1および2の発明は産業上利用可能であると考えられる。

④ ハプロタイプの事例に関するEPOの最大の課題は、クレーム発明が、新規性を伴う場合、進歩性を伴うかどうかを評価することであろう。

 

(2-2)JPOの判断

① クレーム1は進歩性を伴わないため、明確性、実施可能要件および産業上の利用可能性を審査する必要が無い。

②疾患の存在との関連性が開示されていない対立遺伝子の変異については、産業上の利用可能性および実施可能要件を欠如しているであろう。

③ 各ポリヌクレオチドは3267塩基長であり、特定のハプロタイプと特異的にハイブリダイズするには長すぎることから、クレームされたヌクレオチドハプロタイプ間の違いを検出できるか疑わしいため、クレームされたヌクレオチドは、実施可能要件に関する課題を提示している。

④ 疾患Xの患者に対して、疾患Xに作用する薬物Yにより治療した際の反応が特定のハプロタイプと相関することを主張した場合、主張されている相関の科学的信用性をどのように評価するかに関して課題が存在する。

 

(2-3)USPTOの判断

① ハプロタイプの事例に関する主要な課題は、クレームされたハプロタイプの全てが、過度の実験を行うことなく特定の、十分な且つ信頼性のある有用性を有しているいかどうかを決定することである。明細書が、これらの構造中に存在するデータは、薬剤Yに関する個体の感受性を決定するのに有用であることを開示している。しかしながら、これは、核酸分子自身を使用するというよりはむしろ核酸の情報内容を使用している。

② クレームされた方法に関して、明細書は、ハプロタイプを割り当てる方法のための特定の、十分な且つ信頼性のある有用性の存在を主張する明確な記載をしていない。しかしながら、明細書は、治療方法の設計において、少なくともクレームされた分子の潜在的な使用(①を参照)を開示している。個別の薬剤処方の基礎として、ハプロタイプの割り当て方法を使用することが、暗示的に開示されているかどうか、また、もしそうであれば、明細書中のデータが、当業者がクレームの全範囲に渡ってクレームの発明を実施するのに十分な情報を提示しているかどうかを決定するという課題が存在する。

異議申立と無効審判との相違点

来年度から異議申立制度が復活します。

ということで、異議申立と無効審判との相違点を表にまとめてみました。

特許権者側に対して不利な制度のため、権利者側の代理人となる場合にどのように対応するか等については細かな対策を考えておく必要がありそうです。

 

 

表について不足、間違い等があったらご指摘ください。

 

f:id:nannosono:20141111223342j:plain

2014/11/11 表の修正

決定予告制度が運用では導入されるそうです。

それでも、特許権者側には相変わらず不利ですね。

韓国特許法改正

韓国代理人が遊びに来たので、韓国特許法改正について色々聞いてみた。

 

1.仮出願制度の開始

 クレームが無くても出願日が認定されるようなる。

 クレームは優先日から1年以内に出せば良い。

 英語での仮出願も可。ただし、出願日から1年2ヶ月以内に韓国語翻訳文の提出要。

 

2.PCT移行時の翻訳文の提出

 現在は、優先日から31ヶ月までに提出。

 優先日から32ヶ月まで延長される。

 

3.翻訳文主義への変更

 原文からの誤訳訂正が可能になる。

 

4.追納期間後の追納料金の減額

 6ヶ月後の追納期間後、3ヶ月間3倍の特許料を納付することで特許権が回復する。

 3ヶ月間の3倍の特許料が2倍の特許料へ減額。

 

5.その他

 法令改正以外の変更点や、今後の改正予定。

 

(1)プログラムのカテゴリー

 審査基準上、プログラムは物の発明として取り扱うようになる。

 裁判上は不明。

 

(2)FAの短縮

 現在FAまでの平均期間は13.5ヶ月であるが、これを11.7ヶ月まで短縮予定。

 これに伴いOAの発行が、今年より2割程度増える模様のこと。

 

(3)審査対応の方向性の変更

 現在は、特許要件を満たさない出願について拒絶する方向性で審査を行っていたが、今後は、補正の示唆を行う等、特許可能となるように補助する方向で審査を行う。

 具体的には、審査官または特許庁から下記の対応が行われる予定とのこと。

 

 (i)   拡大された優先審査制度の導入

    特許庁が選択した出願について、予め出願人に技術説明会を行ってもらう。

    技術説明会後に審査官はFAを行う。

    なお、技術説明会では、予め補正の方向性について審査官から示唆がある場合も。

 

 (ii)  補正の示唆

    補正の方向性を示唆するOAを発行するようにする。

 

 (iii) 補正書等提出後の補正の示唆

    審査官が補正書および意見書で特許可能と判断できず、且つ、補正可能期間である

    場合、再度補正の方向性について示唆がある場合も。

 

 (iv) 再審査請求後のOA

    再審査請求後、特許可能と判断できない場合、拒絶査定が再度だされるが、今後は

    一度OAを発行し、補正の機会を与えるように変更する。

 

(4)PPH-MOTAINAI施行

 韓国もPPH-MOTAINAI制度が利用可能になる。

 

(5)新規性喪失の例外

 新規性喪失の例外の適用を申請できる期間は、出願時およびPCT移行時の一定期間であるが、延長する方向で法改正される予定。

 

(6)特許査定後の分割出願

 特許査定後の分割出願が可能になるよう法改正される予定。

 

                                     以上

特許権の存続期間の延長

研修も無事終わったので、ブログを再開することにします。

書籍の執筆があるため、春先からしばらく投稿しなくなる可能性もありますが。

 

年に1事件の頻度で知財高裁の大合議体判断が示されますが、

今年は表題の特許権の存続期間の延長に関する審決取消訴訟が合議体の判断対象となるようです。

 

知財高裁 大合議事件

http://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html

 

製薬関係の特許権は、1つの特許権で独占でき、マーケットが非常に大きものです。

このため、最大5年間特許権の存続期間が延長されるということは、企業業績にも大きな影響を与えるため、製薬関係の方はかなり注目されておられでしょう。

 

5月に判決が出るようですので、それまでに制度趣旨と審決内容とをネタに書いてみようかと思います。

 

高速旋回式バレル研磨法

試験勉強をしていた気になったのでいきさつと判例をざざっと斜め読みしてみた。

 

1.概略

X:特許権者

Y:無効審判請求人

 

(1)YがXの保有する特許権(特許759004号)に対し、無効審判を請求した。無効理由は、29条2項、29条の2および36条5項。

(2)第1審決は、刊行物1~3に基づき、当業者が容易に想到しうるため、29条2項の規定に該当するとして、請求認容審決。

(3)X控訴。

(4)第1判決では、無効審判における事実認定に間違いがあり、刊行物1~3に基づき、容易に想到できるとはいえないため、29条2項の規定に該当するとはいえないとして、審決取り消し。

(5)第2審決は、前記判決を受け、29条2項の規定にも該当しないとして、請求棄却審決。

(6)Y控訴。

(7)Yは第2訴訟において、Xの特許は格別な効果を奏するものではないことを示す証明書を提出した。

(8)第2判決では、Yの証明書を採用し、刊行物1~3に基づき容易に想到しえ、29条2項の規定に該当するとして審決取り消し。

(9)X上告。

 

 

2.争点

 第1判決の「事実認定の誤りによる進歩性判断の過誤」という判決の拘束力がどこまで及ぶのかが問題となった。この点に関する主な考え方は、下記の2つである。

 

(1)第1判決は、刊行物1~3の事実認定の誤りについて指摘したため、当該事実認定のみに拘束力が及ぶ(当時の通説)。

(2)第1判決は、事実認定の誤りに基づく進歩性の判断の過誤を指摘したため、刊行物1~3に基づく進歩性の判断にも拘束力が及ぶ。

 

 

3.判決

 「特定の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとはいえないとの理由により、審決の認定判断を誤りであるとしてこれが取り消されて確定した場合には、再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果、審判官は同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたと認定判断することは許されないのであり、したがって、再度の審決取消訴訟において、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りである(同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明する ことができた)として、これを裏付けるための新たな立証をし、更には裁判所がこれを採用して、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違法とすることが許されないことは明らかである。」

 

 ということで、高裁の判断は(1)であったのに対し、最高裁の判断は(2)であった。

 

                                   以 上

 

 最近弁理士資格を取られた方が、第1判決後、Yが上告し、新証拠を提出していれば結果が違っていたんじゃないかとおっしゃっておられた。しかし、最高裁では、新証拠の検証は行わない…。弁理士のレベルが落ちたってこういうことなんでしょうね。