手続のオンライン化@PCT
PCT出願関連の手続で面倒なのは、出願手続はオンラインでできるのに、それ以降の手続の多くがオンライン不可なこと。
企業さんの出願の場合、予備審査請求をすることは基本的にありませんが、大学さんの場合、JSTの支援制度を利用することが多く、国際段階で特許性有りの見解を得ておく必要があります。権利行使時を考えれば予備審査請求はしたくない…!
予備審査請求の書類は、書面を郵送、且つ手数料は特許印紙で納付(電子現金納付可)のため、予備審査請求のときだけ、中央郵便局に特許印紙を買いに走る必要が…。
そんな煩わしい作業も4月1日からはおさらばできるようです。
4月1日から、現行は書面の郵送要、特許印紙等による納付要の手続の一部に関し、オンライン提出や予納からの引き落としが可能となります。
(ただし、英語の場合は、従前通り書面を郵送要)
オンライン手続および予納からの引き落としが可能となるのは以下の通り(特許庁HPから抜粋)。
- 1) 書誌事項の変更手続
氏名(名称)変更届
あて名変更届
国籍変更届
住所変更届
名義変更届(添付書類がある場合を除く。) - 2) 料金納付手続
手数料納付書(国際出願に関する手数料の納付)
手数料納付書(国際予備審査に関する手数料の納付)
手数料補正書
手続補正書(国際予備審査請求書に係る補正)
手数料追加納付書(国際調査に係る追加納付)
手数料追加納付書(国際予備審査に係る追加納付)
請求の範囲の減縮及び手数料追加納付書 - 3) その他
国際予備審査請求書
答弁書
陳述書
請求の範囲の減縮書
上記一覧の内、手続補正書(国際予備審査請求に係る補正)は、3)その他に分類される気もしますが…。
手数料納付関係で、引き続き予納不可なものは、請求関係ぐらいになりそうです。
これらの書面の具体例は、3月上旬に公開されるようなので、今しばらく待つことになりそうです。
国内の手続と似たような様式となると楽ですが、おそらく違うんでしょう。
拒絶理由通知時の応答期間の延長(その2)@国内
4月1日から出願手数料、審査請求料、特許料等の手数料が改定されます。
いずれも現在の手数料より若干お安くなりリーズナブル(?)になるようです。
大手企業にとっては、結構な額の手数料が浮くのではないでしょうか。
その分を使って、より有効な出願をしてもらいたいものです。
先日記載したように、拒絶理由通知に対する応答期間の延長に関し、国内居住者、在外者共に理由不要で延長請求が2回、合計3ヶ月(1回目:2ヶ月、2回目:1ヶ月)の延長が可能となります。
また、応答期間を経過後も応答期間の延長が可能となります。
前者の手数料は2100円から変更されないであろうと、想定していました。
が、後者の手数料は、基準となるものもないため、どの程度費用になるか気になっていたところ、経済産業書のHPの方で公開されていました。
後者は
【特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令】政令・理由(PDF形式:90KB)
の第二条の「特許法第五条第三項の規定による期間の延長(同法第五十条の規定により指定された期間に係るものに限る。)を請求する者」に対応するため、5万1千円となるようで。
とりあえず応答して、拒絶査定が来て審判請求をするという対応よりは若干安いお値段という感じでしょうか。
なお、法定の上限は、6万8千円(特許法第百九十五条別表)であるため、今後変動する可能性はあります。
あっ、前者については、料金に変動はないようです。
在外者の場合、3ヶ月延長した場合の費用が若干お安くなりますね。
制度の運用が緩やかになり、何かあったときにお金で解決できるようになるのは、代理人にとってもありがたいことですが、期限徒過はしたくないものです…。
特許審査基準(用途発明)の改訂(その2)@国内
先日、ブログで記載した食品用途発明の審査基準にする運用変更に関連し、
食品用途を認める審査基準の運用を開始する旨の正式なアナウンスが特許庁からありました。
新たな審査基準の運用開始は、4月中をめどということですので、遅くとも5月には審査基準が変更されそうです。
また、現状審査中の案件に関して分割しておくのも一つの手と考えていましたが、OAが発行されているケースに関しては、応答せず拒絶査定が送達されるものを除き、審査が一度止まるようです。
審査係属中でOA対応中のケースについては、とりあえず応答しておくのがベターで、意見書において、新たな審査基準を踏まえて反論しておくのよりベターというところでしょうか。
運用変更後、食品用途を考慮し、再度OAをうってくれる可能性もあるため、食品用途を考慮し、意見書を出しておくかは悩ましいところですが…。
PPH制度@中国
中国において、ベンチャー系の出願の権利化を行う際に困るのは、まともに使用できる日本のような早期審査制度がないこと。
中国にも優先審査制度は存在しますが、対象がグリーン関連等かなり限定されているため、対象となる出願はかなり少ないのが現状です。
出願数が激増しており、審査官も不足気味なので仕方がないのかもしれません。
さて、そんな中国において唯一まともに使える早期審査制度がPPH制度。
PPH制度を使えば、早ければ2−3週間で、遅くとも6ヶ月程度でFAを受け取れます(平均は2−3ヶ月)。
中国代理人に聞いたところ、PPH制度は、申請時にはじかれることが多い模様。
中国では、他国に比べて特許許可を受けてる対応各国のクレームの文言と、完全一致に近い対応関係を求められ、この点ではじかれる申請が多いのではないかとのことです。
また、1回申請すると、却下されても再度の申請は認められていないとのこと。
ワンチャンスなので、申請時に慎重な検討が必要になりそうです。
なお、PPH制度の申請に対する許可率は、5割程度のようです。
PPH制度を利用した場合、特許許可率はおおよそ88%(2015年1-6月集計)。
全出願の特許許可率が55.2%(2014年集計)であることを考えるとかなり高い割合です。
早期権利化が必要なケースでは、是非検討してみてください。
特許審査基準(用途発明)の改訂@国内
日本では、食品用途は下記のように用途としては認められていません。
特許・実用新案審査基準より抜粋
第III部 第2章 第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱い
3.1.2(2)請求項中に用途限定があるものの、請求項に係る発明が用途発明といえない場合
例2:成分Aを添加した骨強化用ヨーグルト
(説明)確かに、「成分Aを添加した骨強化用ヨーグルト」は、骨におけるカルシウムの吸収を促進するという未知の属性の発見に基づく発明である。しかし、「成分Aを添加したヨーグルト」も「成分Aを添加した骨強化用ヨーグルト」も食品として利用されるものであるので、成分Aを添加した骨強化用ヨーグルト」が食品として新たな用途を提供するものであるとはいえない。したがって、審査官は、「骨強化用」という用途限定が請求項に係る発明を特定するための意味を有しないものとして、請求項に係る発明を認定する。なお、食品分野の技術常識を考慮すると、食品として利用されるものについては、公知の食品の新たな属性を発見したとしても、通常、公知の食品と区別できるような新たな用途を提供することはない。
ところが、最近機能性食品が話題となっており、産業界からもご要望があり、運用が変更されるようです。
議事録は出ていないため、詳細は不明ですが、大まかな内容は下記の配付資料から推定できます。
産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第7回 審査基準専門委員会ワーキンググループ議事要旨 | 経済産業省 特許庁
産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第8回 審査基準専門委員会ワーキンググループ議事要旨 | 経済産業省 特許庁
下記のように、未加工の動植物については厳しく判断し、加工品については基本的に認める方向になるようです。
資料1 食品の用途発明に関する審査基準の改訂についてより抜粋
用途限定のないものとして解釈される発明
「○○用バナナ。」、「○○用生茶葉。」、「○○用サバ。」、「○○用牛肉。」
用途限定のあるものとして解釈される発明
「○○用バナナジュース。」、「○○用茶飲料。」、「○○用魚肉ソーセージ。」、「○○用牛乳。」
4月1日に運用変更開始となりそうなので、これから出願するものについては手当をしておくのが望ましいでしょう。
また、運用開始日以降の「審査」に適用するということですので、現状係属している出願について食品用途の権利化を図りたい場合、分割出願を行っておくのがよいかもしれません。
拒絶理由通知時の応答期間の延長@国内
特許法条約(PLT)及び商標法に関するシンガポール条約(STLT)への加入に伴い、応答期間の延長制度の運用が変更され、便利になるようです。
特許制度を例にあげると、現状は、在外者は期限延長請求書により最大3ヶ月延長できたのに対し、国内居住者は、対比実験を行う際に1ヶ月の延長ができるのみでした。
1)変更点1
運用変更後は、国内居住者、在外者共に、延長請求の理由は不要になり、1回目の延長請求で2ヶ月期限が延長されます。
在外者は、さらに2回目の延長請求で1ヶ月期限が延長され、最長3ヶ月の延長となります(商標は1ヶ月)。
機械系の出願は余りメリットがありませんが、往々にして比較実験が必要になる化学・バイオ系の出願には大きな運用変更になりそうです。
2)変更点2
応答期限後2ヶ月間であれば、延長請求が可能に。
USの延長制度と類似する制度となります。ただし、割増手数料が必要になるので、基本的には先に延長するのがよさそうです。
特許を潰す側からすれば、監視が必要な期間が少し延びることとなります。
3)留意事項
上記延長制度が適用されるのは、拒絶査定不服審判前まで。
このため、審判請求後の拒絶理由通知の応答期間中は適用されません。
延長してしまうと権利化までの期間が延びるため、余り使用したくはありませんが、出願人にとってはOA時の選択肢(特に進歩性)が増えるという意味では便利な運用の変更になりそうです。
中国での分割出願の時期的要件
分割出願は、国によって可能な時期がばらばら。
散弾銃の弾のようにどんどこ分割していく出願を予定している場合、各国のプラクティスを事前に把握して、クライアントと分割の時期を調整しておく必要があるため、頭が痛い話である。
一番頭が痛いのは特許査定後に分割できない国ではあるが…。
日常的に基準としている日本での分割可能な時期はわりかしとシンプルで、下記の3通り。
1.明細書等の補正が可能な期間
2.特許査定後30日間(審判請求後の特許査定時は不可)
3.拒絶査定後3ヶ月間
さて、中国の分割可能な時期について、中国代理人が訪問された際に聞いてみた。
原則、下記1および2を満たす必要があるとのこと。
1.(1)〜(6)のいずれか1つ
(1)出願後査定まで
(2)特許査定後2ヶ月間
(3)拒絶査定後3ヶ月間
(4)拒絶査定不服審判の係属中
(5)拒絶審決に対する不服申立期間
(6)拒絶審決に対する審決取消訴訟の係属中
2.親出願が生きてること
拒絶されても審決取消訴訟中までずっと分割できるってのはすごい。現実的な問題として、そんなところまで行きたくないが。
また、例外的に、前記「2.」を満たさない場合でも、OAで単一性欠如を指摘された際は、分割できるとのこと。
ただし、この際に、OAで指摘されたクレームと全く別のクレームにすると脱法的な行為であるため、何か指摘されるのではないかとのこと。
中国代理人もやったことがないから、実際にどうなるかはわからないとのことではあるが。