論文の残滓

特許実務に関するあれこれ。

UCB v Broadのインターフェアレンスの終了と今後の動向

UC Berkeley v Broadのインターフェアレンスに関するCAFC判決について3ヶ月前に下記の記事をアップしましたが、昨年末に動きがありました。

 

nannosono.hatenablog.com

UCBは上告は行わず、CAFC判決が確定。この結果、再度審査部での審査に付されることになりました。

 

UCBは12月14日付けで一部の請求項の削除と誤記訂正とを行い、後はAllowanceを待つという状況です(特許要件の審査はインターフェアレンス前に一度終了)

ただし、補正の前後に、UCBはEPの異議申立てで提出された文献と推定される、大量の文献をIDS提出しており、1000ページは超えそうなので、これを審査官がチェックするのに時間がかかりそうです。

審査官ご愁傷様…

 

早ければ本年前半には、米国においてもsgRNAを使うCRISPR-Cas9システムの基本特許が成立し、この結果、日米欧中において、sgRNAを使うCRISPR-Cas9システムについては、UCBのライセンスが必要な状況になるでしょう。

 

余談ですが、UCBは、本件に関連して米国で34件の継続出願(うち2件は昨年に特許成立)を行っているため、sgRNAの構造に関する要素技術や、二本鎖型のRNAをガイド鎖とする形態については、これらの出願で権利化していくことになります。

 

時間があれば全件チェックしたいのですが、どうなるやら…。

治験段階に入った、CRISPR Therapeuticsの地中海貧血および鎌状赤血球症の治療に用いられるCRISPR-Cas9システムと、それをカバーする特許群として比較検討しても面白いかもしれません。